コーヒーを愛する人は、繋がりを大切にする。
スペシャリティコーヒーの定義にある”From Seed to Cup”というキーワードも同じことを意味している。
今回の旅では、その実感が深まる出会いが多くあった。
ヨーロッパでの夏休み、2つ目のカフェはブリュッセルにあるOR Coffee Roasters(オア・コーヒー・ロースターズ)だった。
エスプレッソ・バーという呼び名は、僕にとって斬新だった。
ここは、アムステルダムで出会ったBOCCAのバリスタが教えてくれた場所だ。
子どもみたいに嬉しそうな顔をして、メモにたくさんのロースターカフェを書いてくれたうちの1つ。
理由は聞かなかったが、ここは彼にとって大切な1つのカフェであり、あの表情があふれるくらいにクールな何かがきっとあるのだろう。
あまり事前知識を好まない僕にとっても、彼の書いてくれたこのメモは特別だ。
アムステルダム中央駅からThalysに乗れば1時間半くらいでブリュッセルに到着した。
やはり、まずは街をひたすら歩く。今回のヨーロッバでは、すでに50kmは歩いている。
見たことのない景色を楽しみながら、自分と対話をするこの時間は格別だ。
チョコレートやワッフルの甘いにおい。ムール貝などのシーフードなにおい。
すべてが僕の想像力を喚起する。
昼間からテラスでベルギービールを楽しむ人たちのザワつきと、ときおり聞こえてくる鐘の音が、どこか妙な懐かしさを感じさせる場所だった。
みんなすごく良い表情をしている。
OR Coffee Roastersに到着。
ORはフランス語でGOLDを意味する。良いコーヒーを提供したいという意思がダイレクトに伝わってくるネーミングだ。
テラスもたくさんの客で賑わっていた。彼らの表情に僕の期待が高まっていく。
店内に入ると、はじめに目についたのが生産者の写真だ。
カフェにいる人。生産地にいる人。それぞれ、全く別の場所で、違う暮らしをしている。
しかし、僕がこの両者を俯瞰的にみたとき、その場は完全に調和していた。
このカフェに入り、しばらくすると僕はこう思った。
「コンセプトを共有するのに、言葉はいらない。」
見ればわかる。味わえばわかる。感じればわかる。コンセプトは、あらゆるところに体現されていくからだ。
例えばこのスイーツを見て、あなたなら何を感じる?
Coffeeだけではなく、Teaも置かれていた。これを見て何を感じる?
今あなたの感じた、それでいい。それが彼らが伝えているメッセージだからだ。
さて、カフェの中を一周したし、そろそろコーヒーをオーダーしよう。
2人のバリスタが「僕のオーダー」と「ついでの質問」に快く応えてくれた。
オーダーは彼女おすすめのルワンダを、ケメックスで淹れてもらうことにした。
話を聞いてみると、このカフェは2号店らしい。
2009年にAppleで働いていたTomとKatrienという2人のカップルでスタートし、現在はブリュッセルとゲントに2店舗ずつあるようだ。
生産地にも2人でまわっている。店内に飾られた写真は、きっと彼らが撮影したものに違いない。
今はルワンダ・コスタリカ・ブラジルの生産者と繋がり、彼らの取り扱う80%のコーヒー豆はダイレクトトレードだという。
チョコレートつきで出してくれた。
とても甘い、ブラックチェリーのような香り。
その瞬間、彼の笑顔を思い出した。このカフェを教えてくれたBOCCAのバリスタだ。
このカフェでの時間は、BOCCAに続いて期待をはるかに超える体験だった。
次の目的地はあの場所だ。
行ってみたかったカフェがたくさんあるあの国。
どうなってるんだろう。
つづく
#OR Coffee Roasters BRUXELLES (BE)
Opening Times: Mo – Fr: 8 – 18, Sa: 9 – 18, Su: Closed