白を基調としたクリーンな店内、パイナップルの壁紙、レースを思わせるコーヒー豆のラベル。
レッキンボールコーヒーは数あるサンフランシスコのコーヒー屋の中でもキュートな雰囲気。でもロゴはレッキンボール(鉄球クレーン車)というギャップがたまらない。
エスプレッソを試したが、きめ細かい酸が印象的でなめらかな逸品だった。
そんなキュートなレッキンボールは、コーヒー業界にとって非常に重要なお店でもある。
オーナー兼ローストマスターを務めるのは、女性のトリッシュ・ロスギブ(Trish Rothgeb)。コーヒー業界歴は30年におよび、SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)の執行理事も務める。つまり大物だ。また「サードウェーブコーヒー」という言葉を初めて使ったのは彼女だったというのも有名な話。詳しくはこの優れたインタビューを。
コファウンダーでありヘッドバリスタ、そしてトリッシュの夫でもあるニコラス・チョー(Nicholas Cho)は、2006年東南アジアのバリスタチャンピオン。彼もコーヒー業界の要人。ファニーなキャラクターで、先日タブリンで行われたワールドブリュワーズカップでもMCを務めていた。
このスーパー夫婦はコーヒー豆の小売販売をメインにしていたが、満を持して彼らがスタートしたのがこのカフェ、レッキンボールである。
さらに、リチュアルコーヒー(Ritual Coffee)のオーナーも女性で、アイリーン・ハッシ(Eileen Hassi)という。彼女はベイエリアのサードウェーブコーヒーの礎を築いた人物だけれど、それらしからぬキュートな女性だ。ちなみにフォーバレルのオーナー、ジェレミーも元々はリチュアルのファウンダーだった。
日本でロースターとして働いている女の人ってそんなに多くない。
オーナーや経営者ともなればさらに少ないだろう。
これからのコーヒーシーンを考える上で、女性の存在はより大きくなると思う。
なぜならスペシャルティコーヒーは、育み合いをベースにした母性的な世界だから。そしてこれからのコーヒーは、スクエアで職人的な世界から柔軟でしなやかで美しい飲み物に発展していくから。
排他的だったり、孤立していたり、唯我独尊なスタイルはオールドスクール。
もっと自由で、開放的で、そこに参加する全員が幸せになる世界が待っている。
そんな世界なら、女性が(そして男性の中の女性性が)より発揮されるに違いない。
そんなコーヒーを仕事にする女性たちの素晴らしいロールモデルが、トリッシュとアイリーンなのではないだろうか。