フォーバレルのミルクについて、その二。
日本のカフェでミルクのオプションといえば豆乳が主流である。
とはいえ、実際ミルクを選べるのはスターバックスくらいで、スペシャルティ・コーヒーの店で選べる店は少ない。きっとヴィーガンが多い欧米よりニーズが少ないし、コストも高いし、スチームミルクのクオリティを保つのが難しいからだろう。
サンフランシスコではアーモンドミルクをよく見かけた。私は前述したとおり牛乳が苦手なので、カフェに行くとたまにアーモンドミルクラテを飲んでみることがあった。その味は・・・全然美味しくなかったというのが正直なところだ。
フォーバレルは2012年にオプションとしての豆乳をアーモンドミルクに切り替えた。これは(ファンの中では)有名な「SOY IT AIN’T SO」というポスターである。
大豆生産の弊害について。世界の大豆生産の半分以上をアメリカやブラジルが占めているが、大豆の作付けによって大規模に森林が破壊されているという。また遺伝子組み換えの問題も孕んでいる。
スプラッジ(Sprudge)の記事によると、当時オスロのティム・ウェンデルボーも、ニューヨークの伝説的なエスプレッソスタンド、アブラッソ(Abraço)も豆乳をやめ、アブラッソに関してはアーモンドミルクを手作りしているということである。
今ミルク革命(?)を起こしているらしいフォーバレルが取ったアクションは、アブラッソと同様、アーモンドミルクを自分たちでつくることだった。市販のアーモンドミルクは添加物が入っていることが多く、しかも美味しくない。だから自分たちでつくることにしたというわけだ。
まずはアーモンドの調達から。
フォーバレルはサクラメント近郊のマッサ・オーガニクス(Massa Organics)という農場を探し当てた。この農場は有機米を栽培しファーマーズマーケットで手売りするところから始まったという。その後アーモンドの栽培を始めた。自然と農場を調和させるため、豚や羊を放し飼いにしている。それは昔に戻ったような農法だという。
フォーバレルはこう述べている。「彼ら(マッサ・オーガニクス)の米やアーモンドに対するアプローチは、私たちのコーヒーの調達やカフェ運営に対する私たちのアプローチと同じである。だから当然彼らを選んだ」
本質を生きていたら、おたがい分かり合うのも早い。
「(アーモンドミルクをつくるにあたって)地元産のオーガニックアーモンドを選ぶのは難しくなかった。それよりもマカデミアナッツを何粒入れるか、シーソルトを何つまみ入れるか、メープルシロップを何滴入れるかを決めるほうが難しかった」
試行錯誤したのちベストなレシピが出来上がり、バレンシア通りの本店ではもう提供が始まっているという。早く飲んでみたい!!!
「なければつくればいいじゃん」っていう発想で、コストも手間も度外視、経済合理性なんて考えずとにかくやってみる。そんなスタンスがいかにもフォーバレルらしい。
サンフランシスコは本当に不思議な土地だ。最先端のテック企業が集結している傍らで、こんな人間らしいシンプルな営みがある。
きっとこれから世界はサンフランシスコのようなあり方に近付いていくだろう(予言)。