引き続き、ワールドコーヒーリサーチの功績について。
コーヒーのフレーバーホイールというものがある。
カラフルな円形の図で、アップルや、ブルーベリーや、ココナッツなど、フレーバーの名前が書いてある。
SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)によって1995年につくられ、今年2016年に改定された。
これがカッピング(コーヒーのテイスティング)で味を表現するときの世界共通言語となる。
2016年版とともに新たに追加されたものがある。Sensory Lexicon(フレーバー語彙集)だ。
ワールド・コーヒー・リサーチは、これをSCAAと共同で編纂したのである。
この語彙集は意義深く「なるほど、なんで今までなかったんだろう!」と思わされた。
例えばカッピングをしていて、フレーバーに「ストロベリー」を感じるな、と思ったとする。でも世界中には様々な苺がある。日本の大きくて柔らかい苺に比べて、アメリカの苺は酸っぱいかもしれないし、一言で苺と言ってもいろんな品種があったりもするだろう。
であるとするなら、日本人が言う「ストロベリー」とアメリカ人の言う「ストロベリー」ってけっこう違うよね?という疑問が浮かび上がる。
ワールド・コーヒー・リサーチの人たちは語彙集を作ることで「ここでいう苺ってそもそもどの苺?」というのを定義したのだ。
この語彙集、読んでいるととても面白い。
たとえば「ストロベリー」だったらこんな具合だ。
参照元:ドール社の冷凍苺(Dole Whole Strawberries All Natural)
香りの印象度13:冷凍苺を冷蔵庫に一晩入れておく。3.25オンスカップに入れて室温で提供する。そしてプラスチックの蓋をかぶせる。
風味の印象度6:冷凍苺を冷蔵庫に一晩入れておく。3.25オンスカップに入れて室温で提供する。そしてプラスチックの蓋をかぶせる。
超具体的ーーーーー。
これが「ラズベリー」とか「チョコレート」とか、49ページにわたり続いている。
作るの大変だっただろうなー。
WCRの研究者以外で、すべてのフレーバーサンプルを試した人はいるんだろうか?
世界共通言語とはいえ参照元の食材が全部アメリカっぽい(しょうがないけど)。
日本で全部試すのは難しそうだな。
次アメリカに行ったら自分の味のインデックスを増やすためにちょこちょこ試してみよう。
料理の世界でいうと、分子ガストロノミーと言われるものがあるように、
コーヒーも科学的な観点が一般化してきている。
ふつうにコーヒー屋さんにコーヒー濃度計があったり(昔もあったのかな?)。
感性のみの判断や迷信(?)だらけのコーヒーが、フェアでクリアになっていくのはとても快い。
とはいえコーヒーの美味しさって科学だけでも作れない。
それが難しいところでもあり、一番面白いところでもあるんだけど・・・。