私がステイしていたサンフランシスコのミッション通り(24thあたり)は、治安が良いとはとても言い難い。駅前には浮浪者がたむろしているし、深夜に外を歩くのは全くお勧めしない。
そんな薄汚いエリアにも、美点はいくつかある。
メキシコ風の壁画がクールであること、うっとりするようなバナナクリームパイや、本格的なブリトーが食べられること。そして、最高のコーヒー屋があること。Ritual Coffee(リチュアルコーヒー)である。
私がステイしていた時期、丁度、そのミッションの本店(?)が改装のためクローズしていた。
だからサイクリングもかねて高台のヘイズバレーにあるカフェに自転車で行くことにした。
北の高台に向かって、自転車を走らせる。
我らがフォーバレルを通過してそのまま直進すると、高台のふもとに突然高級住宅街が現れる。一本道を挟むだけで雰囲気もカルチャーも人種も所得層もまるで変わってしまう。時には天気までも。これがサンフランシスコの醍醐味だ!
瀟洒な住宅やギャラリーを横目に、ほぼ45度傾斜の坂を自転車を押しながら登ると、リチュアルのカフェが見えてくる。
リチュアルはサードウエーブの源流となるロースターだ。
フォーバレルのオーナーもリチュアル出身だったりする。
リチュアルのオーナーは素敵な女性である。最近カフェがオープンしたWrecking Ball(レッキンボール)も女性がオーナーで、しかも彼女はSCAAの理事である。カッコイイ!アメリカではコーヒー屋のオーナーが女性である事は珍しくないようだ。
《コーヒーと女性》はこれからコーヒーを語る上で重要なトピックのひとつになると思う。
技術や理論に磨きをかけ、ゴリゴリこだわり尽くすコーヒーの世界で、
これからは柔らかい女性的な感性が育まれると、私は予想している!
おこがましいけど、私はその一助になりたいとも思っている…。
ヘイズバレーの店は、貨物コンテナを改装したユニークなカフェだ。
ざっくりとしてて必要最低限だけど、なんだかキュート。
キャッキャと楽しそうに働いている女の子のバリスタさんに「オススメは何ですか?」と尋ねると「ケニアよ!ちょうどニュークロップが届いたところ」とのこと。
注文すると、丁寧にハンドドリップして、白いポットでサーブしてくれた。
なんだかちょっと、贅沢な気分。
丁度ケニアのニュークロップの時期で、いろんなロースターでケニアを飲んだ。
リチュアルのケニアは、尖ったところのない、優しい味がした。
(つづく)