大粒の雨が車のフロントガラスをどんどん叩くように降り出した。 さっきから降っては止み、降っては止みを繰り返している。
今日は移動日。車でひたすら中部に向かっている。前回の旅で出会ったコーヒーの生産者、ダニエルとネイサン一家に会って話をするためだ。まずはダニエルの家を訪れることにした。
実はダニエルとネイサン一家に日本から手紙を書いていた。ポストも郵便局も見たことがないキューバで、手紙は届いているだろうか。
あのはじめて見たコーヒー農園の光景、家族みんなのまっすぐで温かい表情。深い優しさを思い出す。この感じを多くの人に伝えたい。彼らのコーヒーとともに。遠く離れているけれど、コーヒーを通じてつながりを感じ合う。それには人の価値観を動かす力がある。この感覚がこのビジョンの原点なんだ。
ドライバーはよっしー。よっしーの安定感と安心感は前回に引き続き、今回もこの旅を支えている。どんなときもブレずにいてくれる。ありがとう。
私はまだ、自分の不甲斐なさと悲しみとトラブルの恐怖で胸が占められている。
中部に入ってしばらくすると、見慣れた道に出た。山奥への入り口だ。そのくらいから、ひっきりなしに雷が鳴り始めた。夕方を過ぎ、あたりは暗くなり始めた。
「このまま山を登って大丈夫かな・・・」
という不安がみんなの頭をよぎる。でももうここまで来たら、引き返す方が難しい。とにかくダニエルの家の灯りが付いていることを祈りながら車を走らせるのみ。
暗闇の中、もう見飽きるほど雷が閃き続け、車のヘッドライトが前方だけを照らしている。