フォーバレルを出て、バレンシア通りを北に向かって歩く。
マーケット通りを渡って坂道を上がると、ガラッと雰囲気が変わる。
そこは高台の高級住宅街。美しいビクトリア調の建築、整えられた芝生。ホームレスはまったくいない。いつもこのギャップに驚かされる。大通りを挟んだだけなのに、こうも違うとは・・・。
この高級住宅街のはずれ、ディヴィサデロ通りは、サンフランシスコ市民にとって憧れのネイバーフッドだ。オーガニックマーケットの元祖Bi-Rite Market(バイライトマーケット)、サンフランシスコで最も予約が取れないレストランのひとつNopa(ノーパ)などの有名店を中心に、お洒落なセレクトショップやアパレルショップが軒を連ねる。
フォーバレルの二号店、The Mill(ザ・ミル)はそんな場所にある。
扉を開けるとすぐに気付いた、このカフェは本店と対を成している。シンメトリーな店構え、パークレット、木の二枚扉、壁がギャラリーになっていて、正面にエスプレッソバーがあるというお店のつくりは同じで、雰囲気がまったく違う。本店が男なら、二号店はそれを女にしたようなお店なのだ。
ザ・ミルには焙煎機がない。そのかわりお店の奥に製粉機とパンを焼くオーブンがある。
そう、このカフェにはベーカリーが併設されているのだ。
フォーバレルがタッグを組んだのは、Josey Baker Bread(ジョーシー・ベイカー・ブレッド)。
ジョーシーさんはニューヨークに生まれ、2005年にサンフランシスコに移ってきた。友人からサワードウ・スターター(発酵種)を貰ったことから、彼のパン作りは始まった。パンにどっぷりハマった彼は、自分のアパートでパンを焼き続けた。焼きすぎて自分では食べきれないので、パンを知人に配ることにした。あるとき友達から「ちゃんとお金もらったら?」と勧められて、そうか、と気付いてビジネスをスタートしたということである。
場所はミッションのパイ屋さんに、薪オーブンはオークランドのピザ屋さんに借りて、主に定期購入で販売していたところ、フォーバレルのジェレミーから「一緒に店をやらないか」というオファーのメールが届いたという。
くわしくはこの動画を見てください。天真爛漫なこの人の感じ、フォーバレルが惚れたのも頷ける。
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さて、カフェを楽しみましょう!
まず棚に置かれているインテリアや抽出器具をチェック。
オリジナルのリネンなども売っていた。
ジョーシーのパンが並んでいる。ローフだけじゃなくてグラノーラとかもあるんだ。お土産によさそう。
バリスタの雰囲気も本店とは違う。
この女の子が働き者で可愛かった。
コーヒーとトーストを頼んだら、それぞれ別々のカウンターから名前を呼ばれる。
軽やかな手つきでパンをスライスし、トーストし、ジャムを塗る彼。
今回オーダーしたのは、ドリップコーヒーと、アーモンドミルクラテと、ホームメイド・ヌテラトースト。
アーモンドラテが二年前に比べて格段に美味しくなっていた!
アーモンドミルクが手作りになったからか、バリスタさんのスキルが上がったからか。
トーストは本当に美味しいです。ほどよい甘さのヌテラ(ヘーゼルナッツクリームとココアのクリーム)に粗塩のアクセント。クリームチーズとジェノベーゼのも食べたけど、どちらも考えられたバランスだった。納得の美味しさ。パンはずっしり重たいし、オイル分もこってりなので、一枚で十分お腹いっぱいです。
ひいき目無しで、サンフランシスコのベストカフェと言っても過言ではない。
やりたいことを思いっきりやりきってるのがかっこいい。
ジェレミーとジョーシーのシンプルで強い思いが伝わってくるからいい。
これをそのまま日本に持ってきても、こうはならないんだよなー。
(つづく)