バヤモの街に到着したのは、夜の九時を過ぎた頃だった。車の横をどんどん自転車が通り過ぎていく。レンタルサイクルのお店も見かけた。地形が自転車に適しているのだろうか、ここはどうやら自転車の街らしい。
カサに宿泊し、早朝に街を出た。車の中で朝食に、ダニエルのバナナを頬張った。きめ細かくて、爽やかに甘い。日本で食べるバナナと全然違う。農園の風景の余韻、朝焼けの色とバナナの味を私はきっとずっと忘れない。
バヤモ近郊のコントラマエストロという街で、プロセサドーラ(選別所)のディレクターと会った。ここはカフェ・オロ(パーチメント?要確認)の集積所で、テクノロジーを駆使して比重選別やカラー選別を行っているという。オフィスの裏にはラボがあり、テストロースト、カッピングの設備も整っている。
プロセサドーラのディレクターは知的で、ずっと優しい目をしている。
私たちはここで、キューバのコーヒー生産に関して整理して理解し、クオリティを確かめることができた(テストロースターを貸してくれた)ことは大きな収穫だった。
私たちは何も知らないこどもみたいに、誰から教わることもなく、旅を通じて一つ一つ学んでいく。出会った人たちに助けられ、優しさに触れながら。
明日は協同組合を視察する予定だったけれど、どうやら今、キューバにハリケーンが近付いているらしい。今日は晴れているけれど、明日から大変なことになるという。私たちは一旦サンティアゴ・デ・クーバに滞在し、天気の様子を見ることになった。
私たちはまだ、事の深刻さに全く気付いていなかった。
それにしても・・・
このプロセサドーラで受けた「おもてなし」について、書かずにはいられない。
視察はゴージャスな朝食から始まった。サラダ、パン、果物、フライドバナナ、塩豚、タマリンドのジュース。明らかに素材の質が良く、味付けも丁度良い。スピナッタというモロヘイヤのような少し粘り気のある野菜が、とても美味しい。キューバで食べた朝食でベストと言っても良いクオリティである。
朝食をたらふく食べた後、視察を終えると、驚くべきことにランチを用意してくれているという。ローストチキンとコングリ(豆ご飯)、きゅうりとスピナッタのサラダ。最後はバナナのお酒まで振る舞ってくれた。
キューバの食事は美味しくないと思っていたけれど、それは私たちが美味しいものを知らなかっただけかもしれない。キューバでは、レストランより家庭料理の方が断然美味しいと思う。
キューバを訪れる人には、レストランだけでなく、カサなどの家庭料理を味わって欲しい。素朴だけれど、本当に美味しいから。