ダニエルの家の前に到着した時、ドアの隙間から微かに光が漏れているのが見えた。門の前からダニエルの名前を呼び続けると、しばらくして、ドアが開いた。ダニエルだ。
ダニエルは、あの大きな笑顔で私たち五人を迎え入れてくれた。突然訪れたにも関わらず、その目には何の疑いもなく、ただ「来てくれて嬉しい」という顔をしていて、それが強く胸を打った。そんなふうに迎え入れてもらったことなんて、ない。
奥さんも起き出してくれて、まず温かいコーヒーを淹れてくれた。農園で採れたバナナやグアバを出してくれた。
奥さんが部屋の奥から、何かを持ってきてくれた。それは私たちが書いたダニエルへの手紙だった。なんと日本で書いた手紙が届いていたのだ。奥さんも、ダニエルも、届いたときとても嬉しかったと言ってくれた。私は二つの世界が重なったような、不思議な気持ちになった。大阪のいつもの日常と、このキューバの山奥で気持ちがつながったのだ。
ダニエルは「ここを家だと思って。僕らはもう家族だから」と言って大きく笑った。
夜は更けて、お土産に持ってきた日本酒と梅酒、そしてダニエルのラム酒が酌み交わされ、最終的には音楽を流して踊り出し、大変に盛り上がる酒盛りとなった・・・。
写真はダニエルの奥さんが最後に出してくれた温かいコングリ(豆ご飯)。お世辞抜きで、今まで食べたコングリの中で一番美味しかった。お米の硬さや塩加減が絶妙で、香ばしい香りがすると思ったら、にんにくと香草を一緒に炊いているという。
ただただ受け入れて、優しくある。ダニエルは今、好きな仕事をして、家族がいて、それだけで幸せだと言う。そんなふうに生きていたい。どうして私は複雑に考えたり、拒絶してしまったりするんだろう。何がそうさせるんだろう。
私は日本人で、好きな仕事をして、物質的にも無限の選択肢が与えられている中で、どうして幸せじゃないと感じる瞬間があるんだろう。すべて自分で選択したことなのに。一体さらに何を求めているんだろうか。
せっかくの楽しい夜なのに、感じることで頭と心が一杯で、あまり言葉にできなかった。ダニエルは「あなたはあまり喋らないね」と言った。
ベッドが足りなくて、床に寝袋で寝たけれど、私はとても満たされていた。
いつの間にか雷は止み、外は優しい雨が降り続いていた。