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私が焙煎を始めたきっかけ

20代半ばを過ぎた頃、雑誌『カーサ・ブルータス』の「サードウェーブ・コーヒー特集」を読みました。そこに掲載されていた、ブルーボトルコーヒーやフォーバレルコーヒーの記事を読み、衝撃を受けました。「これは自分の目で見ておかなかればならない」と、居ても立ってもいられず、アメリカを訪れることを決めました。

サンフランシスコの街の空気は、身体に馴染むような感じがして、本当に気持ちよかった。合理的でざっくりとした雰囲気が自分に合っていて、明らかに細胞が喜んでいて、いつか必ずここに住みたいと、街を歩き回りながら思いました。

フォーバレルを訪れると、一杯のコーヒーを求めて、人が行列していました。私はルワンダのエスプレッソをオーダーして席に着き、一口飲んでびっくりしました。酸がとても強いのです。でも、とても美味しく感じました。口の中で、風味がスパークするようだった。これは日本では感じたことがない感覚でした。

そして、こんなに個性的なコーヒーを多くの人が求め、行列をなしている事実に改めて驚きました。

アメリカのコーヒーシーンに強く影響を受けた私に、驚くべきタイミングで、あるオファーが舞い降りました。大学卒業後に少しの間だけ勤めていたワインの会社が、コーヒーの焙煎事業を開始するので、責任者を探しているというのです。

しかも、店舗はサードウェーブの焙煎所のような空気感を目指し、焙煎機は最新鋭の機種、ローリングスマートロースターを導入するとのこと。私は運命を感じ、即エントリーすることに決めました。採用が決定した頃、オープンまで残すところ三ヶ月しかない、という状況でした。三ヶ月で、焙煎を完成させ、カフェの立ち上げをしなくてはなりません。

初めて焙煎機を触ったのは、輸入代理店さんのショールームでした。こんな巨大なマシンを私は扱えるのだろうか。不安に思いながら、スタッフさんの言う通りに操作し、生まれて初めての焙煎をしました。焙煎したコーヒーをその場で淹れて飲みましたが、それが美味しいかどうかすら、よく分かりませんでした。

そこからは、暗中模索。教えてくれる人は誰もいないので、自分で試行錯誤するしかありませんでした。でもそれは、素晴らしい経験でした。最高に恵まれた環境の中で、体当たりで焙煎技術を身につけることができたのです。

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